「宮沢賢治の作品を読んでみたい」
そんな想いで『銀河鉄道の夜』に手を出してみたけど思いのほか難しい。
そして半分も読まない内に静かにページを閉じてこう思う。
「ぶっちゃけこの作品の何が良いのか分からない」
そんな方は大勢いるんじゃないでしょうか。
今回は「それでも宮沢賢治作品を楽しみたい、理解したい!」という方向けに導入本を3冊紹介します。
目次
宮沢賢治作品を10倍楽しむためのオススメ本
導入本や解説本などを読まずに賢治本人の作品を読めばすべては事足りるかと思います。
しかし、賢治作品って意外と難しい話が多いんですね。
それは文中に出てくる言葉遣いだったり、専門的な用語だったり、まったくの造語であったり。
または単純に話が難解かつ意味深で分かりにくかったり。
代表作の『銀河鉄道の夜』なんかは、知名度の割にかなり難しい話だと思います。
そんな賢治作品を理解し楽しむための手助けとなるのは、宮沢賢治がどんな人物だったのかを知ることです。
いつどこで生まれて何が好きで、どんな人生を歩んだ人だったのか。
賢治のバックボーンには農業、天文学、地質学、宗教、音楽など様々な学問や芸術の知識がありました。
そういった知識と興味のフル活用、そして賢治自身が持っていた理想や哲学、ままならぬ厳しい現実が混ざり合うことで作品が作られていたのです。
ここから先は、
①宮沢賢治という人物について
②宮沢賢治の作品のあらすじや解釈
③漫画化された賢治作品
の3つにテーマを絞り、3冊のオススメ本を紹介します。
①『学習まんが人物館 宮沢賢治』
書名:宮沢賢治
著者:畑山博(監修)
出版月:1996年08月10日
出版社:小学館
小学館から出ているまんが人物館シリーズの『宮沢賢治』。
この本を読めば賢治の生涯をおおまかに把握することができます。
個人的に面白いと思ったのは、ちょっとした豆知識がさらりと盛り込まれていること。
風の音や賢治の口癖など意外と細かい部分まで研究して書かれているので、大人でも楽しみながら学習することが可能です。
②『マンガで読み解く宮沢賢治の童話事典』
書名:マンガで読み解く宮沢賢治の童話事典
著者:山下 聖美 (著)、中村 美公 (イラスト)
出版月:2015/11/11
出版社:東京堂出版
賢治の童話37篇があらすじ、漫画、作品解説の3点で要約されています。
見所は3つあって以下の通り。
①作品が人物・植物・宇宙など7カテゴリーに分けられている
②あらすじ、漫画、解説はどれも1、2ページほどにぐっと凝縮されている
③途中に挟むコラムで豆知識や面白エピソードが紹介されている
これらの工夫により、時間のない方や活字慣れしていない人でも手軽に読めるようになっています。
絵と文章の比率は半々くらいなので漫画だと思ってページを開くと面食らうかもしれませんが、賢治入門にぴったりな良書だと言えます。
③『ますむら・ひろし賢治シリーズVol.1 銀河鉄道の夜』
書名:ますむら・ひろし賢治シリーズVol.1 銀河鉄道の夜
著者:ますむらひろし
出版月:1995/03/30
出版社:東京堂出版
漫画家・ますむらひろしによる賢治作品の漫画化シリーズ。
ますむらひろし版の『銀河鉄道の夜』では、登場人物がなぜか全員猫化しています。
しかし、不思議と作品の雰囲気や世界観は損なわれておらず、そう言えるのは猫化以外の部分が原作に忠実に作られているからと言えるでしょう。
さて、『銀河鉄道の夜』にはいくつか種類があるのを知っていますか?
実は『銀河鉄道の夜』は完成しているのか分からない作品で、賢治によって3回も手直しが行われているのです。
一般に浸透している、主人公ジョバンニが学校で授業を受けているシーンから始まるバージョンが一応の最終形。
実はその前のバージョンでは導入部分やクライマックスに大きな違いがあるのです。
そして、このマンガには最終形と初期形の2本が収められています。
どちらも『銀河鉄道の夜』で物語に大きな違いはないのですが、後半の展開がガラリと変わっているので必見。
オリジナル作品の『銀河鉄道の夜』に挫折した、面白いと思わなかったという方はこの本でリベンジしてみてはどうでしょう?
賢治ワールドを堪能したら作品に挑もう!
書名:宮沢賢治 (ちくま日本文学 3)
著者:宮沢賢治
出版月:2007/11/20
出版社:筑摩書房
最初に紹介した3冊を読めば宮沢賢治のことが大雑把に理解できます。
そして、賢治の作品を読んだ感覚を味わえます。
しかし、どうしてもオリジナルの作品を読むこと以上の味わいは得られないのが事実です。
以前は挫折したとしても、賢治を知った今なら賢治作品を楽しめるはず、ということでオススメしたいのが↑の本。
賢治の作品はかなり多いので全てを読もうとすると分厚い文庫本が10冊にもなります。
それを買うのも読むのも容易ではないので、ちくま日本文学から出ている『宮沢賢治』でマイルドにカバーしてしまいましょう。
僕がこの本を強くオススメする理由は2つあります。
①注釈がそのページ内にある
文中の難しい漢字にフリガナが振られているのはもちろん、ありがたいのは注釈がそのページ内にあることです。
新潮などから出ている宮沢賢治作品集では注釈が本の後半にずらりと並んでいるので、いちいち確認するのが非常に面倒。
ページを行ったり来たりすることで、流れが途切れたり話が分からなくなることも少なくありませんでした。
新潮文庫で読んでいた時は注釈部分に付箋を貼って、読んでいる箇所の注釈番号の部分にもその都度付箋を貼りながら、作品にはしおりを挟んで…という風に面倒な読み方をしていたのです。
とにもかくにも、ちくま日本文学シリーズの良い所は読者への配慮が徹底されているということです。
「純文学に親しみのない人にも分かりやすく、初心者でも楽しめるように」という編集者の気遣いがひしひしと伝わってくるのです。
②賢治の代表作品をカバーしつつ、印象深い短編、詩なども網羅している
『風の又三郎』、『グスコーブドリの伝記』、『セロ弾きのゴーシュ』といった代表作。
『よだかの星』、『注文の多い料理店』、『やまなし』など、子どもの頃に絵本などで読んだことのあるような短編。
そして『春と修羅(序)』、『永訣の朝』といった有名どころの詩も収められている充実のラインナップ。
これ1冊読めば賢治作品をおおまかに読んだと言えるでしょう。
ただ、あえてなのか『銀河鉄道の夜』は外されています。
ちくま文庫で賢治の主要作品、短編、童話、詩に軽く触れたら全集にチャレンジしてみましょう。
全集は普通に買うと高価で場所も取りますが、kindleならなんと283作品がわずか200円で売られています(!?)。
ちくま日本文学のような注釈はないので若干分かりにくくはありますが、この値段で賢治作品を大量に持ち運びできるのはすごいこと。
何度も読み返したい作品にはブックマークをつけて、いつでもどこでも読めるようにしておきたいですね。
おまけ:星めぐりの歌について
テレビCMや映画など、どこかで耳にしたことがあるかもしれない↑の楽曲。
実はこちらの楽曲「星めぐりの歌」は賢治が作詞作曲しています。
初期童話『双子の星』に歌詞が登場して、『銀河鉄道の夜』ではケンタウルス祭でこの曲を歌うことになっており、ジョバンニとカンパネルラも口笛で「星めぐりの歌」を吹いています。
歌詞のないバージョンなんかもyoutubeに上がっているので、賢治作品を読みながらBGMに「星めぐりの歌」をかけるとより没入感が増しますよ。
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