夏はいつも一人ぼっち。
夏は暑いほうがいい。
夏はうんと静かなのがいい。
今回はそんな話です。
夏休みは一人ぼっち
少年時代の夏休み、僕にはまだ友だちがいました。
学校プールは毎日開放されていて、
そこに行けば必ず誰かがいたので一緒に遊びます。
お昼にプールから上がると、午後に何をしようか話しながら一緒に帰りました。
お昼ご飯を食べたら即ゲーム。
アポも取らずにいきなり友達が遊びに来て、約束していた友達も来て、
いつものメンバーが揃ったら外に出ます。
夕暮れまで遊んだら汗だくで自転車をこいで帰宅。
部屋に入った時のクーラーが気持ちよかったです。
夕飯を食べたらいつもより少し夜更かし。
ゲームボーイをやりながらアイスを食べます。
明日も明後日も、来週も再来週もずっと休みなのが無敵に思えました。
郷愁を誘うテンプレな夏の記憶はここまで。
毎日がお祭りのように特別だった夏休みは過去になって、
思春期に入ってからの僕は圧倒的に静かで孤独な、
これまでの日々がウソだったかのような一人ぼっちの夏休みを過ごすようになりました。
夏休みに一人で暇、なんてことはない
夏休みに一人ぼっちになった途端、世界に急に誰もいなくなりました。
ゲームと2ch(VIP板)で夜更かしがすっかり板についた僕は、
何の感慨も無くぼんやりと、ただ暑くてダルいだけの夏を過ごしていました。
白んできた空と新聞配達のバイクの音。
大抵はそれが眠りの合図になるけど、
時々、近くのコンビニまで徒歩で向かい、
国道のど真ん中をわざとゆっくり歩きます。
帰宅するとすぐにベッドに入りますが、お昼前には暑さで目が覚めました。
クーラーは夜の数時間と勝手に決めていたので、
昼間は図書館やブックオフにいることが多かったです。
図書館への道のりは国道を真っすぐ走るだけですが、
草木が繁茂する干上がりかけた川のそばを、自転車でゆったり走るのが好きでした。
道の先は熱気でぐにゃぐにゃと曲がっています。
時々すれ違うのは真っ黒に日焼けしたランナーと、クロスバイク乗り。
大爆音のセミの鳴き声と熱くなったアスファルトの匂いで想起するのは小学校時代。
友達とは遊ばなくなったけど、勉強は相変わらず後回しで、
これといった絶望もなければ、大した希望もない毎日。
自転車をこいでいる時だけは、あの頃のように何かが起こりそうなワクワク感が少しだけありました。
夏休みの一人の過ごし方
一人ぼっちの夏休みを何度も過ごすと感覚が麻痺してくるのか、
何の感情も無く過ぎていった夏にすら懐かしい気持ちを感じるようになりました。
そして一人ぼっちの夏休みは一人でできるので、何度だって追体験可能。
だから夏は静かで孤独で、うんと暑いのがいいのです。
そんな僕がオススメする最強の夏休みの過ごし方は「散歩」です。
かつて通っていた学校近くを歩いてもいいし、
何でもない田んぼ道を通って図書館に行ってみるのもいいでしょう。
そして、夏はなんといっても夜。
夜更ししてコンビニまで歩く道のりの生暖かい空気。
駐車場でふと見上げた星空。
少し遠回りして学生時代によく登った丘でアイスを食べる。
ただのだらけ生活ですら、一度外に出てしまえば特別な夜になってしまいます。
最近でも、僕は夕方から夜にかけてよく外に飛び出します。
丘のある公園で星を見て、
草の生い茂る怪しい階段にドキドキして、
もっと星の見える場所を探して移動している最中にうり坊の集団に鉢合わせて、
山の中で明け方近くまで星を眺めたり、街を見下ろしたりします。
今ではほとんどの友達と疎遠になりました。
夏の暑さも夜の匂いも何も変わってないけど、
足早に過ぎてく日々は僕を一人ぼっちにします。
だから、今でも夏になるとワクワクして切なくなって、
いつかの夏の残骸を拾い集める為に、
川に行き、山を歩き、田んぼ道を走り、星を数えて、
きっと今年も忘れられない夏になります。
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